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【ブラジル】“本当の”ブラジル人が差別を受ける人種差別問題

あなたが日本人で、日本で暮らしているならば、自分自身が人種差別されることは勿論ないでしょう。一方で、ブラジル人がブラジルで暮らしていても、人種差別を受けることがあります。先祖代々ブラジルで生きてきた、歴史ある由緒正しい家系の「本当のブラジル人」だったとしても。

今回は、ブラジル出身の友人が語ってくれたブラジルの人種差別問題についてご紹介したいと思います。

Table of Contents

ブラジルの人種構成

ブラジルは、様々な人種で構成されています。街中を歩いている時も様々な人種と出会うことができる、いわゆる「人種の坩堝」です。2010年の統計では、構成比率は以下のようになっています。

ブラジルにおける人種構成

先住民族 インディオ 0.4%
アジア人 1.1%
黒人 7.6%
混血 43.1%
白人 47.7%
引用元 Diversity abroad | Brazil Overview
◾️メモ
ブラジルの人口における先住民族の割合は0.4%とかなり少ないということを、覚えておいていただけると、この後の話が理解しやすいと思います。

ブラジルの奴隷と移民


先住民族以外の人種は、主に1500年代以降にブラジルに渡った移民です。

現代社会でもなお、人種差別が色濃く残っている国は多々ありますが、ブラジルも例外ではありません。
1500年以降に移民してきた白人の方が、「本当のブラジル人」とも言える先住民族の人たちよりも社会的立場が高いことが多いのです。
先住民族だけでなく、黒人も同様に虐げられてきました。
ポルトガルによる悪政により、世界で一番黒人奴隷を輸入していた国は、ブラジルだったことをご存知でしょうか。
また、アメリカの奴隷解放宣言に続き、次々と南米各地で奴隷は解放されましたが、最も対応が遅かったのが、ブラジルだったのです。

300年以上続いた奴隷制度と白人至上主義の影響が、今なお残っているのが現在のブラジルです。

さて、実は日本からも、たくさんの人がブラジルに移り住んでいました。
1908年の笹戸丸の集団移住を初めとして、沢山の客船が太平洋を行き来し、20万人を超える移民者を記録しました。

なぜブラジル政府は日本からの移民を受け入れることを決めたの?

そんな疑問があるかもしれません。

悲しいことに回答は、一言で言うと「肌の色が黒人より明るいから」と言えます。
ブラジルの歴史を振り返ると、ポルトガルに植民地化されて以降、国の政策等から明確に読み取れる程に白人至上主義が横行していました。

1808年  ポルトガル王室がブラジルに到着、白人至上主義
1850年  奴隷貿易廃止
       黒人奴隷の流入が停止、奴隷に代替する労働力を輸入する必要があった。
1884年〜 ヨーロッパから大量に移民受入(イタリア人、ポルトガル人、スペイン人、ドイツ人など)
       奴隷解放によって急激に不足した労働力を補完するためにヨーロッパからの移民を受け入れた。
       このような自主的なヨーロッパからの移民は、ブラジルの「白人化」のために良いとされた。
1888年  ブラジル黒人奴隷解放
       アメリカ合衆国で「奴隷解放宣言」が発布されたのは1863年。
       その後、南米各地で同様に奴隷は解放されてゆきましたが、ブラジルでの発布は最も遅いものでした。
1904年〜 日本から移民受入
       ヨーロッパからの移民が急減、奴隷の労働力の更なる代替として日本人移民を受け入れた。
<おまけ>

豊臣秀吉がキリスト教を禁じた事は有名ですね。
禁止した背景にはポルトガルやスペインの奴隷貿易があったことをご存知ですか。

豊臣秀吉は、イエズス会の最高責任者に以下の4つの質問状を送り、その後追放令を突きつけました。

<豊臣秀吉の質問状>
一つ、なぜかくも熱心に日本の人々をキリシタンにしようとするのか。
一つ、なぜ神社仏閣を破壊し、坊主を迫害し、彼らと融和しようとしないのか。
一つ、牛馬は人間にとって有益な動物であるにもかかわらず、なぜこれを食べようとするのか。
一つ、なぜポルトガル人は多数の日本人を買い、奴隷として国外へ連れて行くようなことをするのか。

もし、豊臣秀吉がキリスト教を禁止し、奴隷貿易を止めていなければ、ペルーのインカ帝国の神殿のように、日本の神社やお寺は全て破壊されてキリスト教の教会となり、メキシコのアステカ帝国の首都テノチティトランのように、徹底的に破壊されてヨーロッパ調の建物に建て替えられ、さらには、大量の日本人が奴隷になっていたかもしれません。


参考記事:「日本人の奴隷化」を食い止めた豊臣秀吉の大英断

インディオと黒人に対する人種差別

インディオ差別

「本当のブラジル人」と呼ばれるに相応しい、先住民族のインディオですが、人種差別の対象になっています。

インディオである友人が、数十万円するマウンテンバイクを購入する時の話。

マウンテンバイク店の定員の態度が客の肌の色で異なるといいます。実際に白人の客には、すぐに定員がアテンドして商品説明に励むのにも関わらず、インディオである彼には誰もアテンドしない。彼のことを無視して、誰も商品案内をしない。

彼曰く、それは日常茶飯事で、インディオである彼に対してもしっかりと説明してくれた店舗で、購入するようにしているとのことでした。

黒人差別

インディオである友人のクライアントだった、とある黒人系イギリス人の話。

黒人系イギリス人が「ブラジルは人種差別が酷い国だ」と憤慨していたそう。どんな差別を受けたのかよくよく話を聞いてみると、黒人であるだけで疑いの目をかけられるのだと言います。
例えば、お店に入る度に、警備員が彼の後ろについてまわる等。他の人種の場合は、警備員は動かないのに、黒人である彼が入店すると、警戒してついてきたとのこと。

インディオの彼は、笑いながら「残念だけど、ブラジルではよくあることだ」と伝えたそうです。

現代社会 インディオの友人の視点

2023年現在でも、そんなあからさまな差別があるなんて信じられないね

と私が言うと、彼は少し笑いながら答えました。

70年前の第二次世界大戦の影響が、今の日本にあるように
300年間も続いたブラジルの奴隷制度の影響が、まだ今も残っているのは仕方のないことだよ。

私たちの唯一の灯りである焚き火がパチパチと響くアマゾンの森の中で、それから、彼はこう言いました。

差別はまだあるけれど、僕は今の時代が一番良い時代だと思ってる。
もし100年前にインディオとして産まれていたら、今みたいに自由な生活はできないからね。

もうすぐ産まれる彼の娘が生きる時代は、更に良い時代になりますように。

そんな事を祈りつつ、私にできることは何かを考えながら、この記事を締めたいと思います。

⚠️注意

筆者は、ブラジル史の専門家ではありません。筆者が現時点で得た情報と、筆者の視点に基づいて記載していますこと、ご了承ください。

より深くブラジル史を知りたい方は、ぜひ以下の本をご参考ください。

ブラジルの歴史を知るための50章

伊藤 秋仁 (著, 編集), 岸和田 仁 (著, 編集) 


それでは、また。🇧🇷

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