【ブラジル】今日も燃え続けているアマゾンの森林 – 無関心による破壊
「今、アマゾンの森が燃えている」と聞いて、あなたは驚きますか? いままでの人生の中で、森林破壊の問題について、どこかで耳にしたことがあるはずです。アマゾンの森に火を放ち、そこで農業をする「焼畑農業」と、それが国際社会で問題として取り上げられたということを。 そうなんです。なんとアマゾンの森は、今日も燃え続けています。(2023年11月現在) 今回は、私たちがアマゾン川流域に滞在した際に、現地の人から聞いた話に基づいて「アマゾンの森林破壊」についてご紹介します。 アマゾンの土地は痩せている 燃えている話の前に、まずはアマゾン川流域の土地について、お話したいと思います。 アマゾンといえば、広大な森林と雄大な河をイメージするかと思います。そして、鬱蒼と茂る緑から、アマゾンの土地が栄養価が高い肥えた土地だと思うことでしょう。アマゾン地域を畑にしたら、放っておいても草木がどんどん成長しそうですよね? 残念ながら、アマゾンの土壌に栄養価は殆ど無いんです。 理由は簡単。「植物が全て吸収している状態」からです。 アマゾンの森林では、 ・木々から葉が落ちる、老木が倒れる・葉や木が腐って栄養となる・栄養を使って木が育つ という循環を繰り返し続けています。 その循環の中にある「栄養」がどこに留まっているかというと、土ではなく、植物になのです。 「アマゾンを燃やして農業をする」と、さぞかし良い農作物が簡単にできるようなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし残念ながら、焼畑農業をした土地を継続利用することは難しく、大量の肥料を購入して利用し続けないことには、農作物が育たない環境なのです。 アマゾンの森を通る道路から枯れてゆく アマゾンの土地が痩せているため、栄養循環の鍵が「葉や木が腐る」ということは、想像いただけたと思います。 そして「葉や木が腐る」ためには、湿度が必要です。実際に、アマゾンの森林の中は湿度が高く、菌類も繁殖しやすい状態だそうです。 一方で、人間の生活範囲を広げるために道路などを建設すると、道路と隣接する部分が外気に触れて、湿度が一気に低下します。道路に面している部分の森林は、乾燥して「葉や木が腐る」スピードが遅くなってしまいます。 <おまけ> ちなみに、2023年11月9日現在、アマゾン近郊のマナウスでは “酷暑警報”が発令されています。道路が焼けるような暑さになる事で、森林が保っていた水分がどんどん蒸発してしまいます。 私たちがマナウスに滞在していた期間、アマゾン川の水量が日々減少しているのを目の当たりにしました。 今、アマゾンの森が燃えている 今、本当にアマゾンの森は燃えています。(2023年11月現在)日々、燃えている/燃やされている状態です。 マナウス在住の友人によると、私たちがアマゾン近郊の街 Manaus マナウスに到着した1週間前は、アマゾンが燃えている煙で街の空気が霞んでいたそうです。 どのような理由で燃えているのか、2パターンに分けて見てみましょう。 理由1:自然に発生する森林火災 森林火災というキーワードを近年よく耳にするようになりました。2023年8月にハワイのマウイ島で森林火災があった事は、日本でもニュースになっていたと思います。 アマゾンの森林でも、森林火災は発生しています。本来であれば、高湿度を保っている森林ですから、森林火災が大規模になることは稀でした。ただ、前述した通り、道路などを多数建設したことが原因で湿度が下がってしまった部分は、大規模火災に発展してしまうようです。 理由2:人工的に発生させる森林火災 人工的に発生させる森林火災、それは「焼畑農業」です。森林を燃やして土地を開拓し、そこで農業を営む。ただし、問題があります。皆さん既にご存知の通り、「アマゾンの土地は痩せている」という事です。継続してその土地を使い続けて農作物を育てて利益を得るためには、大量の肥料を仕入れる必要があります。 とある店舗の所有者が「利益を二倍にしたい、何か方法は無いか。」と言った時、「簡単です。店舗をもうひとつ増やせば良い」と、答えた… なんて珍回答を聞いた事がありますか。(ありませんか。笑) そんな要領で、アマゾンの別の土地が更に燃やされるという事態が、今現在発生しています。 <補足> 実は、「焼畑農業」という手法は、最近始まったわけではありません。先住民族が伝統的に利用していた方法でした。しかし、資本主義に基づかないその伝統的な農業の方法は、持続可能な農業手法で、アマゾンの森林を減少させることなく人と森林は共存し続けていました。そして、現在でも焼畑農業を活用した持続可能な農業手法を続けている住民も多くいるそうです。 以下、先住民族の友人談アマゾンの森林を破壊しているのは、ドイツ系ブラジル人が経営する企業が多い。一辺倒に焼畑農業を批判するのではなく、先住民族が伝統的に続けてきた持続可能な農業手法は守りつつ、利益を追求するが故に発生する大規模焼畑農業は批判するべきだと思う。 ブラジル政府を変えられるのはブラジル人だけ と、思ったアナタ。残念ながら、ブラジルの選挙での投票権が無い限り、”直接的”に関与するのは難しいです。それは、現在のアマゾンの焼畑農業を推進しているのは、ブラジル国民に選ばれたブラジル政府だからです。 資本主義の社会で、富を求めて事業を行うのは普通のことです。アマゾンの土地も、富を求めて開発され続けるわけです。 マナウス在住の友人曰く、現在のブラジル政府がアマゾンの焼畑農業を完全に禁止する政策を打ち出す事は、現時点ではどうやら無いようです。 マナウス在住の友人はアマゾンの森林減少を危機感を持って語ってくれましたが、違う地域のブラジル人も同様に危機感をもっているかというと、そうとも限らないようです…。 社会問題と向き合う時に心に留めておくべき二宮金次郎の言葉 アマゾンの森林に関する問題をご紹介しました。「地球の肺」とも言われるアマゾンの森林を守りたい気持ちは山々ですが、「守ろう!」というだけでは解決しない問題だと思います。 モヤモヤする気持ちだけを与える記事になってしまったかと思いますが、ここで1つ二宮金次郎の言葉を書いて締めたいと思います。 道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は戯言である。 経済の観点が伴う問題解決策を唱えなければ、アマゾンの森が消えてなくなるまで、人間が吸う酸素がなくなるまで、残念ながら森は燃え続けるのだと思います。 (もしくは「森林破壊」が「道徳なき経済」と判定されて、犯罪行為として認められたらいいのか….難しいです。) ⚠️注意 筆者は、ブラジル社会の専門家ではありません。筆者が現時点で得た情報と、筆者の視点に基づいて記載していますこと、ご了承ください。 より深くブラジル史を知りたい方は、ぜひ以下の本をご参考ください。 ブラジルの歴史を知るための50章 伊藤…